気持ちを落ち着かせようと、車のハンドルを握る手にぐっと力を込めた。
高速道路の景色が、まるでネフとの再会を急かすように後ろへと流れていく。
窓を開ければ、冬の冷たいけれど、どこか澄んだ空気が頬を撫で、
「大丈夫、ネフは待っているよ」と囁きかけてくれている感じさえした。
病院の駐車場に車を停めると、心臓の鼓動が聞こえるのが自分でもわかった。
一刻も早く、ネフに会いたい。
待合室の硬い椅子に腰掛け、名前が呼ばれるのを今か今かと待つ。
雑誌を手に取ってみても、文字は少しも頭に入ってこない。
視線は、診察室のドアに吸い寄せられたままだった。ようやく私たちの名前が呼ばれた。
「ネフちゃん、どうぞ」
診察室のドアを開けると、そこには、いつもより少し小さく見えるネフがいた。
お腹には痛々しい大きな傷跡があり、何針も縫ってあった。
そして、前足には点滴の跡なのだろうか、包帯がぐるぐると痛々しく巻かれていた。
その姿を見た瞬間、胸がキュッと締め付けられる。


いつもはまるで空気のようにマイペースに過ごしているネフ。
けれど、そのネフが、私たちの顔を見た途端、弱々しいながらも尻尾を振り、
よろよろと駆け寄ってきて、前足で私の膝に飛びついてきた。
その瞳は、「ずっと寂しかったよ、怖かったよ、痛かったんだよ」と訴えかけているようで、思わず涙が溢れそうになるのを必死で堪えた。
ああ、どれほど心細かったことだろう。
私は、ただただネフを抱きしめ、その小さな頭を何度も何度も撫でた。
先生が、摘出した脾臓の写真を私たちに見せてくれた。
それは、教科書でしか見たことのないような、生々しい赤黒い塊だった。
写真越しでさえ伝わってくるその存在感に、再び胸が締め付けられる。
どれほど苦しかっただろうか。言葉にならない感情が込み上げてきた。
「脾臓は病理検査に出して、結果は後日郵送でお知らせします。
もし良性であれば、これで治療は終わりです。悪性の場合は…
その時にまた、これからのことを一緒に考えましょう。」
先生は静かに、しかし力強くそう告げた。
そして、 「抜糸は、こちらに来ていただいても、かかりつけの病院でも大丈夫ですよ。」 と付け加えた。


結果はどうなるかわからない。先のことを考えて不安に押しつぶされそうになる心を、「今、心配しても仕方ない」と無理やり押さえつける。
今はただ、ネフが生きて私たちの元へ帰ってきてくれたこと、それだけを考えよう。
この小さな命が、大きな試練を乗り越えたのだから。
時計を見れば、12月28日。今年も、もうすぐ終わる。
「ネフ、年末年始をまた一緒に過ごせるね。本当に良かった。」
そう囁きかけると、ネフは私の腕の中で、安心したように小さく息をついた。
さあ、お家に帰ろう。ネフの大好きな温かいお家へ。
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